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コラム
素材の企画・開発・販売

地域全体で育てていくお米由来のバイオマスプラスチックの価値 株式会社バイオマスレジン熊本

2025.08.07
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熊本県水俣市に拠点を構える株式会社バイオマスレジン熊本様。
同工場からはお米の良い香りがしています。

株式会社バイオマスレジン熊本様ではやむなく廃棄されてしまうお米や食用に適さない古米を原料としてプラスチック樹脂を製造しています。
昨今、世界的に環境問題に取り組んでいる中バイオマスプラスチックはSDGsの観点からみても大変注目されている素材です。

今回は熊本の事務所兼工場にお邪魔してお話を聞かせていただきました!

受付に置いてあるブロック「OKOMEIRO」もお米由来のプラスチックで作られているそう。

事務所の入口にはお米を原料に作られた商品が紹介されています。どの商品もお米由来の優しい風合いがおしゃれで実用的なものばかり。
こちらは現地で購入も可能となっています!

爽やかな色合いの「COME」袋。使いやすいサイズ感です。
お米計量カップ、粉振りスプーン、計量スプーン。こういった日用品が環境にやさしい素材で作られていると使うのがうれしくなりますよね!

お話を伺ったのは株式会社バイオマスレジン熊本 代表取締役の森 功介様です。

大事なお米を「処理」するのではなく、「再生」する

―まずはバイオマスレジン熊本の成り立ちをお伺いできますでしょうか?

森 様:元々は私たちの地場の焼酎廃液などの地場産業から発生する産業廃棄物を取り扱う事業が主体の親会社の下に生まれました。
海洋投棄事業が私たちの元々のコア事業でしたが、その後日本がロンドン条約批准国であったことをきっかけとして海洋投棄を2007年に日本国内でも全廃となり、今まで処分できていたものを今度は陸上で堆肥化処理(コンポスト)するという流れに変化しました。
その中で地場の中で色々なものが出てくるのですが、「お米を処分してほしい」という依頼がありました。
ちょうど今古米などが話題になっていますが、すごく年数が経って食味が落ちてしまったお米というものを大量にお持ちだった農家さんがいらっしゃいました。お米というのは適正にきちんとした形で処理をしなくてはいけないということもありまして、生産農家の方から我々がご相談を受けました。
これが私たちにとってお米由来のバイオマスプラスチックのスタートです。

―それまではお米というのはどのように処理されていたのでしょうか?

森 様:大体は自分のところの収穫後の水田に肥料として撒いたり、家畜用飼料として販売をしていますが、それ以上に量がありすぎて処理しきれず、それが毎年余っていきプールしていくと気づけばすごい量になってしまったというケースが多くあったと思われます。そんな状況でのご相談でした。
ただ、お米の処理自体は簡単にできますが、お米は大事にしなさいと私たちのおじいさんやおばあさんから小さいころから刷り込まれていることでしたので、単純にそれをやっていいものなのか?というところは会社としても大きな悩みでしたし、どうにか上手く違う形で再生できないか?ということを考えて約17年前に初めてお米からプラスチック原料を作る技術に出会いました。

―そんな前からお米からプラスチック原料を作る技術があったんですね。

森 様:ただ、その時はお米とPPを配合させた原料しかなく、出来上がったフィルムは通常のフィルムに比べ、固くあまり伸びもしなかったので、実用化までもっていくのが難しかったことを覚えています。
そこから本格的に樹脂の開発を行わなければ製品化が厳しいと考え、今に至ります。
会社を作ったのは2022年になりますので、自分たちで着手するまで時間はとてもかかりました。
本当は2021年にスタートしたかったのですが、当時のコロナ渦において機械が順調に入ってこなかった経緯もありずれ込んだ形です。
この工場が稼働開始した2022年というのはコロナの終わり時期ではありましたが、当時旅行にいくことが難しく、旅行で定番のお土産用お菓子の動きが悪く、その中でも米菓系のお土産に関してもそれに使用する米菓用のお米が数年動かせないといった影響がありました。
そのため、古米や古古米というレベルにおいてすごい数量が出てきて、そのお米をここで対処してもらえないか?という相談がまずあったので、ここからスタートしようということになりそれが第一号でした。
そういう意味では困っていたものをアップサイクルできたという点ではスタート地点はとても良かったと思っています。

株式会社バイオマスレジン熊本 代表取締役の森 功介様。丁寧にインタビューに応えていただきました。

―現在の生産状況はいかがでしょうか?

森 様:現在、ラインは1台となっておりメインはPP(ポリプロピレン)ベース(主力)となっておりますが、PE(ポリエチレン)も生産しています。生産能力としては今後増加する見通しがあれば考える必要がありますが、現状ではまだ問題ありません。

―現在の活動範囲(エリア)はどのあたりまであるのでしょうか?

森 様:今のところ九州エリア内となります。
地域のニーズを熟知している地域で生業を行う複数のパートナー企業と協力し、そういった方々と情報共有しながら進めています。
その他ですと関西や東海などでも活発になっています。

―どんな採用事例があるのでしょうか?

森 様:例えば、全国展開のファーストフード店様は、熊本県内のFCオーナー様が全国FCオーナー会の会長を務めていらっしゃいました。どうにかスプーンやフォーク、ストローなどの提案を持ち込みたく相談したところ、これを了承して頂き提案の機会を頂きました。
その後、同ファーストフード店のSDGsアクションの一環として取り組み始め、ただ資材を入れ替えるだけではなく、一緒に米作りをしようという話がスタートになりました。
熊本県八代市に農業を辞められた方の土地をお借りし水田をつくり、2023年より一緒にお米作りを開始しました。2024年は45~6t、2023年は52tほど生産してもらい、当社で全量買い取って加工、同ファーストフードのアイテムとしてリターンするスキームを作りました。
お互いにやろうとしていたことが水田を使うことで生まれる原料を協働で育て、利用するということが上手く事業理念にはまったことが大きかったです。
また、食を扱う同企業として、いつかは来るであろう食糧危機のセーフティネットをどこかで張らなくてはと思っており、そのスタート地点である畑や水田が使われないまま放置されているのは非常に危険と捉え、その耕作放棄地をあえて使おうという意図もありました。

あとは水俣市にある初の女子プロサッカーチームの公式グッズのバンバンスティックにお米由来のバイオマスプラスチックが使われています。
水俣ユニオンフットボールウイメン_水俣ユニオンFCWというのですが、同クラブは2024年熊本県リーグで優勝、今は九州2部に属しています。2025シーズンから、弊社では、同チームの公式グッズを販売しております。
近年では、スタジアム建設、移動手段によるCO2排出、ごみ問題など、サッカーの試合運営と環境保護には密接な関係があると捉えられています。
実際、Jリーグにおいても、環境問題への取り組みとして、再生可能エネルギーの導入、環境負荷の低いスタジアムづくり、ゴミ削減活動などが進められています。
同チームコンセプトにおいても脱炭素のテーマがあり何かしらの形で貢献したいという想いがあったものの、そのノウハウがありませんでした。
こうした中、オフィシャルグッズを環境に配慮した素材で製造し、お客様に使って頂くのはどうか?と提案したのが始まりでした。
同グッズはECサイトでも販売しておりますが、売れ行きは好調です。

―様々な分野でお米由来のバイオマスプラスチックを通じてブランドが構築されていますね!

森 様:当然私たちだけでは無理だと思いますし、地域で頑張って頂いている皆さんがやってくれて、ブランド価値を高めていってくれているということがとてもありがたく感じています。
現代ではSDGsというワードで動き出しているところが多いですが、それがない時代からこの地域は環境活動をやってきました。良い環境を失った経験があるこの地域では水俣病の教訓があるので環境に対する意識というのは国内をみてもずば抜けて高いと思っています。
水俣市では環境と人間の社会をいかに共生させていくかということを30年ほど前から本格にスタートしていっています。
例えばゴミの分別に関しても水俣では23種類と細かく分かれています。私たちの開発は企業や自治体、地域などが同じ方向や温度、視点で進めていかないと進まないですし、どれかが抜けても止まってしまいます。
全ての関係者の意識や行動のおかげで私たちの事業は前進できているのだと感じています。

森社長のインタビューからは「ただ物を売る」ということではなく、「企業」「自治体」「地域」の三位一体となった取り組みや仕組みづくりがいかに重要であるかを学ばせていただきました。

そんな地域での活動を大切にされている森社長ですが、今回その中でお米由来のバイオマスプラスチックを使用した製品が採用となっている宿泊施設様へお邪魔しましたので、ご紹介いたします。

温泉旅館「湯の児温泉 海と夕やけ」 採用事例 

熊本県水俣市にある温泉旅館、「湯の児温泉 海と夕やけ」の運営を行っている株式会社湯の児海と夕やけ様。

同旅館でもお米由来のバイオマスプラスチックを使用した製品を取り扱って頂いているということで取材をさせて頂きました。

湯の児温泉は約1900年前、第12代景行天皇が南九州遠征の際に発見したと言われています。

海辺で傷ついた大海亀のそばで湧き出る温泉に気づき、それに触れた際当時はまだ湯温が低かったらしく、「湯の親に対して湯の子供だな」とおっしゃったのが「湯の児」の由来だと言われているそうです。

時を経て、1925年に50℃を超える温泉掘削に成功して、湯の児温泉は温泉地としてスタートしました。また、2025年で開湯100周年を迎えたそうです!

同旅館では「この地この場で地域の恵みを活かし、社会の心温を上げる」をミッションに掲げ、ここでしか見られない日本夕日百選に選ばれた絶景や名湯百選の温泉がある「地の利」、再生した不知火海で獲れる豊富な海の幸や山の幸などの「地産物」、また、温泉宿・ホテル総選挙2024全国ランキングにおいて「おもてなし部門全国1位」にも選ばれたこの地域に関係し働く「人々」など、「地の利」「地産物」「人」の地域の恵みを活かした相互作用で心温まる社会を創ることに努めていらっしゃるそうです。そんな湯の児温泉 海と夕やけの旅館でも、お米由来のバイオマスプラスチックを使用した製品が採用されていました。

同旅館では湯の児の豊かな食を堪能できるお食事も大きな魅力の一つですが、そこで使用されているカトラリーの中でお米由来のバイオマスプラスチックを使用したスプーンを発見しました。

実際にそれを使ってカレーライスを食べてみましたが、ユニバーサルデザインとなっており口当たりも良くとても美味しく感じました。

ビュッフェの入り口にはお米からできたスプーンとお箸のご紹介が。
お米由来のバイオマスプラスチックで作られたスプーンでカレーをいただきました!ちなみにカレーは朝と夜で味わいを変えているそう。食べるお客様への心遣いが嬉しいです。

また同旅館の1階では売店もあり、水俣や湯の児の名物からおすすめ商品、四季折々の特産品まで幅広く取り揃えられておりますが、その中でお食事にも採用されていたお米由来のバイオマスプラスチックを使用したスプーンが販売されておりました。
お土産で販売されている同商品には柄の部分に同社のロゴマークが印刷されています。
湯の児の由来にちなんだ亀と夕焼けのオレンジがモチーフとなっており、お土産にぴったりな商品となっています。
その他には人と環境に優しい、お米から生まれた新しいダイヤブロック「OKOMEIRO(オコメイロ)」や「お米のおままごとセット」などお子様向けの商品を取り扱っています。

こちらがロゴマーク。亀の絵がとても可愛いのです!
お子様が口に入れても安心なお米由来のバイオマスプラスチックで作られたおもちゃ。

同社の企業ミッションにもある通り、環境モデル都市である水俣の中において、まさに「地の利」「地産物」「人」の地域の恵みを活かした相互作用が上手く働いていると実感しました。
実際にお食事や温泉はもちろんのこと、スタッフの皆様のホスピタリティがとても印象的で、心が温まる素敵な旅館でした。
機会がありましたら是非宿泊してみてください。
夏休みの旅行先にもおすすめです!

株式会社湯の児海と夕やけ 代表取締役社長 笹川陽平様、取締役支配人 福田若菜様

水俣市のイベント「恋龍祭」

先述のように地域での採用実績が増加しているバイオマスレジン熊本ですが、同社では今年5月に開催された第70回を迎えた水俣市のイベント「恋龍祭」にも出展されておりましたので、私たちも参加させて頂きました。

恋龍祭とは昭和31(1956)年に水俣港が貿易港に指定されたことをきっかけにスタートしたイベントで、当時は「みなまた港まつり」として、水俣港に艦艇が入港するほか、港をスタート地点として仮装行列や神輿で列を作った市民が、市内中心部まで大行進する「カーニバル」や、総おどりなどのイベントも同時に開催していたそうです。
やがて、水俣の沖合に浮かぶ「恋路島」と、市街地を見下ろす「龍山」から付けられた「恋龍祭」に名称を変え、2022年からは「みなまた港フェスティバル」と「恋龍祭」を同時開催し、その他さまざまな集客イベントとの同時開催で、賑わいを見せています。
現在では、エコパーク水俣を中心会場として、物販や自衛隊広報展示、体験航海や船内見学などが開催され、夜には花火などのイベントもしています。

そんな中バイオマスレジン熊本では、お米由来のバイオマスプラスチックを使用した製品などをご紹介・販売をしており、また地元の女子サッカーチーム「水俣ユニオンFWC」のグッズ販売も実施しておりました。
お米由来のバイオマスプラスチックの製品ではこの度新商品として「RiZAST®」もお披露目となりました。お米を原料として作られた食器ということで、環境保全の一環としてたくさんの方々に興味を示していただきました。

当日はとてもいいお天気で大変気持ちの良いお祭り日和でした!
水俣ユニオンFCWのバンバンスティック!応援の時には欠かせないアイテムです。
こちらがRiZASTⓇ。ポップな色合いですがお米由来の風合いでかわいいです!

当日会場では小さなお子さんたちも多く来場しており、自衛隊広報展示での体験や、出店を楽しんでいたのが印象的でした。後日伺ったお話では、開催された2日間で約25,000名が来場されたそうです。

水俣市は1992年(平成4年)に日本で初めて「環境モデル都市づくり宣言」を行い、2008年(平成20年)7月には、その取り組みの実績と提案が評価され、国の環境モデル都市に認定されていますが、本イベントを実際に体感して地域コミュニティの結束力を実感しました。

並行してバイオマスレジン熊本様でも更なる採用事例が生まれると思いますので、引き続き本サイトでご紹介させて頂きたいと思います!

最後に本取材に関わって頂きました皆様に感謝を申し上げます。

取材協力:
株式会社バイオマスレジン熊本
〒867-0068 熊本県水俣市浜松町5-24

株式会社湯の児海と夕やけ
〒867-0009 熊本県水俣市大迫1213
ホームページはこちら→ https://www.umitoyuyake.com/
インスタグラムはこちら→ https://www.instagram.com/umitoyuyake/