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素材の企画・開発・販売

「ライスレジン」が目指す地球にやさしい未来と福島の復興

2025.06.09
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環境保全と福島の復興を目指した取り組み

近年、SDGsや環境を重視する取り組みが行われる中で、既存の石油プラスチックから、植物由来の資源を原料としたバイオマスプラスチックが世界で注目されています。

とうもろこし、サトウキビなど様々な原料のバイオマスプラスチックがありますが、私たちがもっとも身近で親しみを感じるのは『お米』を原料とするライスレジンプラスチックではないでしょうか。

わたしたちが日頃食べている食用米ではなく国内で食用に適さなくなってしまったお米を原材料として、新しいテクノロジーでプラスチックにアップサイクルしたものがライスレジンという環境素材に生まれ変わっています。

そんな、環境に優しく日本由来のライスレジンを製造している株式会社ライスレジン様にお話を伺いました。

農業支援、創造的復興に向けて

株式会社ライスレジン本社は福島県浪江町にあります。

浪江町は海・山・川に囲まれた豊かな自然を誇り、大堀相馬焼やなみえ焼きそばといった名産品でも有名な町です。そして、2011年に発生した東日本大震災の記憶が色濃く残る地域でもあります。

被災前は米農家が多く点在しており米作りが盛んでしたが、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で休耕地となりました。その後、2014年から作付けが再開されましたが、風評被害もあり2022年になっても8割が休耕地のままでした。そんな中同社は、ライスレジンの原材料に食用に適さなくなったお米を活用するだけでなく、地元の休耕地や耕作放棄地で原料用としてお米の栽培を開始し、その原料米も使用して現在のライスレジンを製造されています。農地を活用することによって地域の復興、地域雇用の確保、福島浜通りの原風景の復活など、さらにより良い地域づくりを目指しているのです。

豊かな自然にかこまれた浪江町。取材させていただいた日には美しい虹がかかっていました。
株式会社ライスレジン様の外観
駐車場の番号がなんとお米の形!かわいいです。

持続可能な社会への貢献

一般的なプラスチックは石油からできており、焼却処分時に二酸化炭素を発生させます。

例えばゴミ袋。ライスレジンを使用することで配合したお米の分だけ使用する石油資源を減らすことができ、焼却時に通常のプラスチックを使用することと比較して二酸化炭素を削減できます。

それはお米が生育時に二酸化炭素を吸収し、焼却時の二酸化炭素排出量を相殺するからです。大気中に排出される温室効果ガスの量と森林などの吸収量を差し引いて、全体で実質ゼロにするカーボンニュートラルのサイクルが成立します。そして浪江町内で栽培された原料米を使用してライスレジンを製造することで、原料輸送に伴う二酸化炭素排出量を減らすこともできるのです。

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みだけではありません。

ライスレジンの製造は原料米のほかにも古米や粉砕米、政府備蓄米など食用に適さない廃棄米を原料として製造されるためフードロス対策に貢献することを目的にしているのです。

ライスレジン製造はまさしく炊飯!

ライスレジンが出来るまでの工程は大きく分けて3つ。

1.プラスチック原料と混ぜたお米に熱を加えて柔らかくして伸ばす

2.柔らかくして伸ばしたものを冷やし固め、粒状にカットする

3.均等に水分が抜けるようにしっかりと乾燥させる

熱を加えると伸びるお米の性質を活かして熱を加えながら混ぜ合わせます。原料となるお米は種類・品種・グレードや保管状況などによって状態は様々です。その為、ライスレジンの品質が安定するように原料の状態によって独自の技術で製造方法を工夫されています。まさに美味しいお米を炊き上げるように、温度・加熱時間を変えて炊飯するようにライスレジンは製造されています。

プラスチック原料とまぜたお米がパスタ状に出てきました。
粒状にカットされたのがこちら。お米の香りがいい匂いです!

環境にやさしい、温かみのある風合いのライスレジン製品

現在、ライスレジンを使った製品は800点以上に上っています。食器をはじめ、子供用のおもちゃ、レジ袋、クリアファイルなど様々な形状に加工することができます。

お米が混ざっていることで淡い乳白色のような色がつくため真白やクリアな色味の商品が難しいのですが、ナチュラルな風合いにあたたかみを感じることができます。

また、ライスレジンの含有率によってお米の香ばしい香りがほのかに残ります。

歯ブラシ、お箸、お猪口など日用品などにも採用されています!
優しい乳白色なので、あたたかみを感じることができます。

昨今は地域指定ゴミ袋や、2021年からは新潟県苗場で開催されている音楽イベント、フジロックフェスティバルの配布用ごみ袋として採用されており、SDGsに積極的に取り組んでいる団体・企業・自治体から注目されています。

ライスレジンが当たり前の世界になるように

今回こちらの記事制作にあたり、株式会社ライスレジン 取締役の今津様にお話を伺いました。

― 様々な原料のバイオマスプラスチックが作られていますが、量産する・安定的な品質を保つ・価格を維持するなど色々な条件を考えるとあくまでも国産という前提では原材料はお米しかないとわたしは思っています。お米は日本どこの地域でも作っており、安定的な原材料の量が政府備蓄米などを含めてですが調達ができます。

残念ながら、今はまだライスレジンの一般的な認知度はまだまだ低いと思います。ライスレジンが注目されてめずらしがられることではなく、当たり前に世の中で使われるようになってほしいと思っています。その為に現状の課題である価格や品質、使い勝手など一般的なプラスチックに劣る部分を改善できるよう取り組み、一般化できるよう拡大拡販していけるようにしてきたいと思っています。

株式会社ライスレジン 取締役 今津 健充様

ライスレジンが特別なものではなく、当たり前に使われるように取り組まれている姿勢が印象的でした。

日常生活にサステナブルな選択肢を

私自身、取材させていただいてから雑貨屋さんなどでライスレジン製の商品を見つけることが多くなりました。

当たり前にライスレジン製の商品が使用されるようになるには、まず一人一人が日常生活でちょっとした意識をして「サステナブルな選択」を選択肢に入れることだと思います。

環境に優しいお米を原料としたライスレジン。

サステナブルやSDGsの取り組みにご興味のある企業様・団体様は、お気軽にお問い合わせください。

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取材協力: 株式会社ライスレジン

https://www.riceresin.co.jp/

〒979-1511 福島県双葉郡浪江町大字棚塩字北金ヶ森1-1

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