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わたしたちの生活を支えるポリエチレン

2025.07.11
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私たちの身近にあるプラスチック。日常の中では、スーパーのレジ袋やごみ袋などによく使われています。
もちろんそれ以外にも食品を包む袋やショッピングの袋など、数えきれないほど多くの場面で目にすることができます。

そんなプラスチックの種類は100種類以上あり、種類によって様々な特性をもっています。
その特性は包む対象(中身)の特性などを確認し、それらに応じた様々な機能が求められます。
一見ただのプラスチックに見えても、それぞれの特性を活かして作られた容器包装なのです。
さらに容器包装に使用される主なプラスチックに絞ると、その材質種類は約10種類になります。
今回はその中でも代表的な種類である「ポリエチレン」という材質についてご紹介したいと思います。

ポリエチレンとは?

ポリエチレン(Polyethylene)は数多くあるプラスチックの一種で合成樹脂に分類されます。
合成樹脂とは石油などの化石燃料を原料として人工的に作られた高分子化合物のことを指しています。
略称でよくレジ袋や包装袋の裏に「PE」と書いてあるのを目にしますが、それは「(P)oly(E)thylene」の頭文字を取ったものからきています。
ポリエチレンは様々なプラスチックの中で特に幅広い用途で使われています。レジ袋・食品包装・ラップなどの包装材料、ポリタンクやボトルなどの容器、パイプや電線被覆といった産業資材、その他にも日用品から医療器具までその汎用性はとても高いものがあります。
少し難しい話ですが、ポリエチレンの原料は炭素と水素で構成された「エチレン」という単量体(モノマー)で、このエチレンが重合してできた高分子化合物がポリエチレンとなります。
また、ポリエチレンの特徴として加工が容易でコストも比較的安価であることから、先述の通り幅広い用途で使用されているのです。

ポリエチレンの種類

そんなポリエチレン(PE)ですが、いくつかのタイプがありそれぞれに特徴があります。以下はその主な種類と特徴をまとめたものです。

上記のように、ポリエチレンの種類はいくつかありそれぞれ異なる特性を持つため、用途に応じて適切な種類を選ぶことが重要になります。この種類は「密度」によって分類されています。

・低密度ポリエチレン(LDPE)
業界では「LDPE」や「ローデン」といった名称で呼ばれています。密度は0.91~0.93g/㎥未満のものを指し、高圧法(エチレンを1000気圧以上の高圧下で重合させる方法)で製造されます。
主にインフレーション成形によるフィルム用途で広く用いられ、包装材、食品容器、農業用フィルムなど多岐にわたる分野で活躍しています。高透明グレードや耐熱改良グレードなど、多様なニーズに応える製品が市場に供給されています。

・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
「LLDPE」や「リニアローデン」などといった名称で呼ばれています。密度は0.91~0.93g/㎥で従来の低密度ポリエチレン(LDPE)とは異なり、直鎖状の分子構造を持つことからこのように呼ばれています。
よく低密度ポリエチレン(LDPE)と類似しているので混乱してしまいますが、LDPEより強靭で破れにくく、引き裂きに対して強い特性を持っています。この2種の比較としては以下の通りです。

・高密度ポリエチレン(HDPE)
「HDPE」や「ハイデン」などといった名称で呼ばれています。
密度は0.94g/㎥以上と定義されており、主に中圧法または低圧法と呼ばれる方法で製造されます。
成形性やリサイクル性も高く硬くて丈夫、外部からの衝撃に強いため容器や配管材料などにも適しており、優れた耐薬品性があるので化学薬品容器などにも利用されています。反面、加工はLDPEやLLDPEよりやや難しく、透明性も比べると低くなります。

・超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)
同じポリエチレンの中でも、あまり聞きなれない種類かもしれません。
一般的なポリエチレンよりもずっと分子量が大きく(分子量を100~700万まで高めたもの)、エンジニアリングプラスチックと呼ばれるものの一つです。略称では「UHMW」「U-PE」「UPE」とも言われています。
分子量が大きいため、非常に高い耐摩耗性、高い衝撃強度、自己潤滑性などが特徴です。そのため医療や機械工業、防護用具などの業界にも多く使用されています。反面、高温に向かなかったり(耐熱性が低い)、急激な温度変化が発生する環境には向いておらず、自己潤滑性の高さから接着加工には向かないなどといったデメリットもあります。

ポリエチレンが抱える環境課題

上記のようにポリエチレンには様々な種類があり、その特徴を活かして様々な形に変化しながら、私たちの生活を日々支えています。
しかしながら、近年では「プラスチック」や「環境」といったワードは切っても切れない関係にあります。
実際に、通常のポリエチレンは環境観点からどのような課題を抱えているのでしょうか。

まず、通常のポリエチレンには生分解性はありません。自然分解でも相当な年数がかかり、河川や海洋に流れ込むとマイクロプラスチックに劣化し、魚や鳥の体内に取り込まれる可能性があります。
特にレジ袋などは軽量で風に飛ばされやすく、海にも流れ込みやすいという特徴があり、それらを海洋生物が誤食し生態系に悪影響を与えているとも言われています。

二つ目は廃棄やリサイクルについてです。
ポリエチレン自体はリサイクルは可能となっており、実際に取り組んでいる企業もたくさんありますが、それでも回収率や再利用率は低いと言われています。
日本のリサイクルには主に3種類あり「ケミカルリサイクル」「マテリアルリサイクル」「サーマルリサイクル」があります。
2023年度のデータでは樹脂生産量が887万tで、このうちの23%(204万t)がポリエチレンとされています。
それに対して廃プラ総排出量は769万tで、このうちの89%(688万t)※1が有効利用されたとされています。
これだけ聞くと高い水準にあるようにも思えますが、内訳としてはマテリアルリサイクル22%、ケミカルリサイクル3%、サーマルリサイクル62%となっております。この一番シェアの大きいサーマルリサイクルですが、これはポリエチレンを燃焼させて熱エネルギーとして利用する方法を指しております。
ただ、海外ではこのサーマルリサイクルはリサイクルとしてみなされないケースが多く、結果としてはプラスチックを燃やしていることになります。
つまり海外基準でみてしまえばマテリアルとケミカルのリサイクル率としては合算しても25%程度に留まっているとも言えます。

※1数値参考資料:一般社団法人プラスチック循環利用協会より
https://www.pwmi.or.jp/column/column-2566/

このようにポリエチレンはとても便利な素材ですが、その特徴が返って環境には逆効果になる側面もあります。
ポリエチレンと上手く付き合っていくためにも環境負荷を最小限にする取り組むことが我々企業にも求められるものとなります。

当グループの取り組み

今回はポリエチレンについて紹介をさせて頂きました。
当グループのスカイフィルム株式会社では、主にHDPE、LDPE、LLDPEといったポリエチレン樹脂を使用したインフレーションフィルムやキャスティングフィルムの事業を一体化し、お客様のニーズに合わせたフィルム製膜を強みとして、日々様々な製品を提供しています。
また先述の通り環境問題が深刻化する中、当グループにおいてもその環境負荷を軽減すべく、製造時に発生する端材のリサイクル事業やライスレジンやホタテの貝殻を使用したバイオマス素材(CO2削減)製品の製造開発などの事業を加速させています。

ポリエチレンは私たちの生活を支えてくれる重要なものでまだまだ必要な素材となっておりますが、今後も更なるエコアクションを加えていき、お客様をはじめ社会に貢献できるように努めて参ります。